第1章 真っ黒
別に誰かと会話がしたいわけでも、誰かと一緒にいたかったわけでもない。
だから話すネタもなければ、気遣いもいらない。
私は、持っていた缶のお酒の飲んで、息をはいた。
彼もまた、それ以上話すわけでもない。
沈黙だが、お互いに思うことがあってここにきているのだろう。
それを特に詮索するつもりもないのだ。
でもさすがに15分ほど沈黙のあと、なんとなく気になり、また左側をみた。
銀髪の男は座って暗闇にぼんやりと浮かぶ里をみすえていた。
「ねぇ…」
「‥…なに?」
銀髪の男は、ゆっくり私のほうをむいた。
なんだ、顔、右目しかみえない。
マスクで覆われていて、左目は額当てでかくれている。
それに____
「…あなたのここ‥…真っ黒‥‥」