第30章 ○振られてから始まる / 甘
寮の外でぼーっとしていたら、緑谷くんに声をかけられた。
「こんなところで何してるの? 風邪引いちゃうよ? 」
そういうと私の隣に座る緑谷くん。
『なんでも、ないよ…?』
思わず声が震えてしまった。
言えない、さっきある人に振られたなんて。
「そっか…」
何も聞かずにそばにいてくれる緑谷くん。
私は空気を変えようと緑谷くんに話題を振った。
「緑谷くんこそ、何してたの?」
聞いたら思いもよらない答えが返ってきた。
「実は僕の好きな人が、振られる現場を見に行ってたんだ」
『……えっ…』
「その人には悪いけど凄く嬉しかった。僕にもチャンスが出来たから…」
緑谷くんの瞳が私の瞳を捕らえる。
「僕じゃダメかな…?」
『…え、っと…そのっ…//』
急すぎて頭が追いついていかない。
だってずっとクラスメイトで恋愛対象として見たことなくて、今も普段の緑谷くんとは到底思えない別人みたいな顔で私を見つめていて。
でも思い返すと他の女子達とは何か違う感じがしていたけど。
「…ごめんねっ、混乱してるよねっ、でも僕、ずっと君のことが好きで、もう後悔したくないんだっ…」
『…み、どりや、くんっ…///』
「嫌だったら逃げて…」
そう言われて気づいたら唇を奪われていた。
拒むことをしなかったのは、もしかしたら好きだったのかもしれない。
END