第6章 和泉守兼定 優しい兄ではいられない・:*+.
その時、顔を紅潮させたいろはが戻ってきて目を奪われる。
艶っぽく濡れている姿を妙に意識してしまい、目を合わせられない。
「兼さん?腕の傷見せて?女将さんに救急箱借りてきたから、手当てしよう。」
いろはが俺の腕に触れると、身体の熱が一気に上昇する。
「大丈夫だ。自分でやる。俺も湯殿に行ってくるからいろははもう先に寝てろ。な?」
俺は冷静になる為、部屋から出て大きく深呼吸した。
部屋に戻るといろはが布団に横になっていた。
隣の布団に横になり、いろはの背中を見つめる。
その時いろはがくるっとこっちを向き、目線が重なり合う。
「…兼さん。あのね?私がまだ新米だった時、兼さんに立派な審神者になりたいなら、一振りの刀剣に感情移入しちゃいけないって言われたでしょ?
だから兼さんに審神者として一人前になったって認めてもらった時に、ちゃんと想いを伝えようって思ってたの。もしそれが何十年かかったとしても諦めないって。私ね…兼さんが好き。」
真っ直ぐな情熱を持った瞳に射抜かれる。
いろはが立派な審神者になるために、必死に努力してきた事を誰よりも知ってる。
とっさにいろはを強く抱きしめた。
「悪かった。俺は自分勝手でかっこ悪い男だ。
恋仲になって嫉妬や独占欲に溺れて余裕のない俺を見せたくなくて、兄貴っていう立場に逃げてた。…でも無駄だった。日に日に増していくこの気持ちに蓋をしてたつもりだったのに、抑えてた分一気に溢れちまった。いろはが好きだ。これからは愛刀として俺を見てくれねぇか?」
「兼さん…嬉しい。これからはかっこ悪い兼さんも全部見せて欲しいな」
いろはは潤んだ瞳で悪戯っぽくほほえむ。
「んっ…」
俺はいろはに愛しむような口付けをする。
ついばむような口付けがどんどん深くねっとりしたものに変わっていき、いろはの体温が上がるのを感じる。
「あっ…かねさ…んっ」
「ほら。もっと口開けろよ?ん。いい子だ。」
舌先でいろはの口内の隅々まで刺激すると蕩けた瞳は虚になってくる。
一度唇を離し、はぁはぁと呼吸を乱すいろはの背中を優しくさする。