第7章 その瞳にうつるのは❄︎【時透無一郎】
月日が流れ、季節が3つ変わった。
変わったことは2つある。
僕と椿姫は、あれから夫婦になった。
そして、僕と椿姫は父親と母親になった。
『ふふふっ、香澄(かすみ)は無一郎くんそっくりね』
子どもを抱く椿姫はころころと微笑む。
たしかに、双子の妹の香澄の容姿は僕に似ている。
「それなら泉澄(いずみ)は椿姫にそっくりだよ」
その代わりに双子の兄、泉澄の容姿は椿姫に似ている。
『そうね、男の子と女の子。どっちもわたしたちに似ているわ』
「そうだね」
小さな赤ん坊を抱いた僕と椿姫は、寄り添うように子どもをあやす。
『無一郎くん』
「どうしたの?椿姫」
椿姫が僕の方を見て、
『わたし、無一郎くんがずっと好きだったのよ』
とはにかみながら言った。
「僕もずっと椿姫が好きだったよ」
僕たちは笑うと、幸せを噛み締めた。
その瞳にうつるのは君の笑顔だ。
❄︎
Fin.
❄︎