第3章 花のように微笑む君は【伊黒小芭内】
「疲れただろう、椿姫」
小芭内さんはわたしを優しく抱き寄せる。
『ほんの少し…』
わたしは困ったように微笑むと、小芭内さんはそっと額に口づけをする。
それがくすぐったくて、肩をすくめると小芭内さんが頬を撫でた。
「引っ越してすぐのご挨拶だったからな。今日はゆっくり過ごそうとするか」
小芭内さんは私の手をそっと引き、縁側に連れて行き隣に座るように促した。
『もうすぐ秋になりますね』
出会った頃は夏だった。
気がつけばひとつの季節が変わろうとしている。
「そうだな」
小芭内さんはわたしの手をとり、優しく握る。
わたしは小芭内さんを見ると、こちらを優しい目で見ている小芭内さんと目が合った。
『小芭内さん、わたしとても幸せです』
わたしは微笑むと、小芭内さんはほんの少し目を見開き、ひとつ瞬きをするとその表情は消えていた。
優しい顔をした小芭内さんがお返しとばかりに微笑み、
「あぁ、俺も幸せだ」
わたしを抱き寄せる。
小芭内さんにわたしはそのまま身体をあずける。
「椿姫、今日は初夜なのだが…抱いても良いだろうか…」
小芭内さんはわたしの頬に手を伸ばし、優しく上を向かせた。
『はい…』
わたしは、少し掠れた声が出てしまった。
それを小芭内さんはふっと微笑むと、口付けをする。
『んっ…はぁ…』
心臓がドキドキとうるさい。
小芭内さんに聞こえたらどうしよう…と、思っていると口が離れた。
お互いの唇から銀色の糸が繋がっていて、ぷつんと切れた。
「椿姫、寝屋に行こうか」
と、小芭内さんはわたしを横抱きすると寝屋に向かう。
『小芭内さんっ、自分で歩きますっ』
「いや、今日くらい甘えてくれ」
そのまま額に口づけを落とす。
『は、はい…』
どうしてこんなに格好いいのでしょう…
心臓が持ちません…
寝屋に着き、布団の上にわたしをそっと下ろす。
小芭内さんはそのままわたしに口づけを落とした。
❄︎