第3章 花のように微笑む君は【伊黒小芭内】
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花のように微笑む君を初めて見たときに、俺はーーーーー
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代々、藤の花の家紋の家をしている。
わたしは、そこの女主人として毎日鬼狩りさまが訪れるのを待っている。
今日は天気が良いため鬼狩りさまがいつきても良いように、来客用の布団を外に出しいそいそと干す。
布団を干し終えると洗濯物を済ませる。
ついでにたくさんのシーツも洗い、シワを伸ばし干した。
『ふぅー、こんなところでしょうか』
うーんと伸びをすると、近くのお店に食材を買いに行く。
これでいつ来てもいいように準備しているのだ。
わたしの家族は少し前に病死や鬼に殺され、わたしひとりになってしまった。
悪いことが重なり、死神、疫病神とひそひそと言われているのをわたしは知らぬふりして過ごしている。
わたしは嫁いでいてもおかしくはない年だが、その噂のせいで嫁ぎ先がない。
わたしの役目は鬼狩りさまの役に立つこと。
その役目があるため、特に嫁ぎたいとも思わない。
鬼狩りさまのため、わたしは命を、人生を捧げたのだ。
わたしはたくさんの食材を買い足し、帰路を急いだ。
屋敷に着くと、玄関の近くの壁に背を預ける鬼狩りさまが立っていた。
『まぁ!鬼狩りさま!!こんなところでお待ちになっていたんですか?』
わたしは慌てて駆け寄ると、鬼狩りさまは左右の色の違う瞳でわたしをちらりと見る。
わたしは微笑み、玄関の扉を開ける。
『どうぞ、中へ。わたしひとりなので、ときおりこんなことがあるんです…申し訳ありません』
鬼狩りさまを中へ入るように促し、わたしは深々と頭を下げた。
鬼狩りさまは一歩も動く様子を見せず、不審に思い顔を上げると鬼狩りさまはじっとわたしを見下ろしていた。
『あ、あの…なにか…?』
わたしはおずおずと疑問を口にすると、急に鬼狩りさまは動き、わたしの両手をぎゅっと握った。
『きゃぁ!?』
「俺の妻にならないか」
わたしは驚いて悲鳴をあげ、それを気にする素振りもない鬼狩りさまは真剣な顔でそう言った。
『え…?』
わたしはその言葉を飲み込むことができず、間の抜けた声が口から出ていた。
『え…えっ…とぉ…?』
「俺の妻にならないか」
鬼狩りさまは再度、同じ言葉を言った。
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