第15章 しあわせのクローバー【嘴平伊之助】
あれから数日が経った。
今日は伊之助くんと付き合って3年の記念日で、わたしは朝からぱたぱたと忙しなく動いている。
理由は簡単だ。
「椿姫ー、まだかよ」
『まだ!』
そう、記念日デートなのだ。
わたしは少しでも可愛くみられたいから、と数日前から入念にスキンケアをしていた。
今日のコンディションは最高に良く、メイクノリもビックリするくらい良い。
わたしはお気に入りの化粧品でメイクを施し、群を抜いてのお気に入りのアイシャドウ、リップでメイクを終わらせると、軽く髪の毛を巻いてからヘアアレンジをする。
それから新しいワンピースに身を包み、鏡の前でくるりとまわり、おかしなところがないか確認してから
『ごめんね!準備できたよ!』
と伊之助くんのところに戻る。
「おぅ」
と伊之助くんは無愛想に、そして視線を逸らしてそう言うとソファから立ち上がり玄関に向かった。
わたしはバッグの中に必要最低限のメイク道具の入ったポーチ、お財布などを詰めると伊之助くんの後を追うように玄関に向かった。
❄︎
今日は朝から遊びにショッピング、そして美味しいものをお腹いっぱいになるまで食べたりと、1日デートを満喫した。
『今日も楽しかったなぁ〜』
わたしたちは思い出のひとつである浜辺を、手を繋いでゆっくり歩いていた。
『これからもよろしくね、伊之助くん』
わたしは立ち止まり、伊之助くんの方を向いた。
「あぁ」
いつもより口数の少ない伊之助くんに首を傾げつつも、わたしはふふふっと笑った。
「椿姫」
『うん?』
いつになく真剣な表情で、声音で名前を呼ばれたわたしは伊之助くんをじっと見つめる。
伊之助くんはポケットから小さな箱を取り出すと、蓋をぱかりと開くと、そこにはいつかを連想させる四葉のクローバーの指輪がきらりと輝いていた。
「俺と結婚して欲しい」
と、それだけ言った。
わたしはビックリして固まっていたが、涙が目の淵から溢れ出すと同時に頷きながら、
『はいっ!』
と返事をし、伊之助くんはわたしの左手を取り、クローバーモチーフの指輪をはめた。
それからわたしたちは、どちらともなく抱きしめ合ったのだった。
❄︎
椿姫のお腹の中に小さな命が芽生えていることをしるのは、もう少し後の話。
❄︎
Fin.
❄︎