第14章 きみは手のひらの上 罪と罰❄︎【善逸・無一郎】
時計を見ると朝の10時を過ぎた時間だった。
俺ははぁとため息をひとつ落とした。
思い出すのは昨夜のこと。
幼なじみだからと連絡先を交換していたから、必然的にメッセージアプリの名前リストに雪柳さんの名前がある。
それをタップしてメッセージを作成するも、なんで送ろうか悩むうちに数時間スマホと睨めっこしていたようだ。
これじゃ埒があかないと電話帳を開き、雪柳さんの名前を探し電話をかけることにした。
コール音が数回鳴り、ぷつっと音がしてから雪柳さんの鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえてきた。
『もしもし?』
「あ、えっと…もしもし」
『ふふふっ、どうしたの?我妻くん』
俺は年下である無一郎との会話を思い出し口を開いた。
「…学校の帰りにさ、無一郎と会ってさ…」
『うん?ふたり仲良いよね、よく一緒にいるの見かけるし』
それは雪柳さんの見間違いです…
本当は無一郎のことはあまり好きじゃない。
だってなにを考えてるのかよく分からないし、雪柳さんを好きだと言いながら心音を聞いても変わらない音が余計に怖い。
「あー、うん…まぁ…明日、俺も一緒に勉強してもいいかな?」
『もちろん、歓迎するよ〜。我妻くん、苦手なところ多いもんね』
雪柳さんは電話の向こうでくすくす笑っている。
「うん、だから…教えて欲しいな、って」
『いいよ、いいよ。みんなでやった方が早く終わるしね』
雪柳さんはなんの疑いもなく賛成した。
俺たちが雪柳さんの人生をこれから狂わせることを知らないから…
「明日、10時30分過ぎごろに行くね」
『はーい、待ってます!』
必要なことを話すと電話を切った。
本当にこれでよかったのだろうか…
何度も何度も自問自答を繰り返すが、それに答えは返ってこない。
気づけば日付が変わっていた。
❄︎