第14章 きみは手のひらの上 罪と罰❄︎【善逸・無一郎】
「もしもし、我妻さん」
僕は椿姫お姉さんの家から帰り、自室へ行ってから我妻さんに電話をかけた。
学校からの帰り道、我妻さんがひとりぶつぶつ呟いているのを聞いて、我妻さんにことの全てを聞いた。
椿姫お姉さんを知らない男に取られたくない一心で自宅に荷物を置き、椿姫お姉さんの家に向かっていた。
しばらく椿姫お姉さんと談笑をしたのち、向かいにある家に帰ってきてすぐに我妻さんに電話をかけたのだ。
「…もしもし」
我妻さんは気の弱そうな感じで電話に出た。
「僕は明日から椿姫さんのところに行くよ。我妻さんはどうするの?」
「え…」
僕がそう言うと、我妻さんは予想外だというような、思考が追いついていないような反応をした。
「勉強を教えてもらう、という口実なんだけどね。あれを実行したいなーって」
電話の向こう側はしばらく静かだったが、小さな声が聞こえた。
「…俺も行くよ。雪柳さんにメッセージ入れてみる」
「よかったぁ。我妻さんがいるといろいろ助かるんだよね」
僕はふふふっと笑い、明日のことを軽く打ち合わせをした。
「……じゃぁ明日、10時30分ごろ家の前で」
「…うん」
時間の確認をしてから電話を切った。
これでやっと、椿姫お姉さん…ううん、違う。
椿姫さんを手に入れられるんだ…!
そう思うと、いまから楽しみで仕方ない。
あの綺麗な長い艶やかな黒髪も、キラキラと澄んだ綺麗な瞳も、きめ細かい肌も、すらりと伸びた手足も…
あぁ…早く、明日にならないかなぁ…
そう思っていると、扉を開けた有一郎が僕を呆れたような表情でこちらを見ていた。
「…また椿姫姉さんのところに行くの?無一郎」
「明日から勉強を教えてもらうことになっているんだ」
「…いつまでそれを続ける気?」
有一郎は僕が勉強ができることを唯一知っている。
僕は気づいてないと言うように言葉を濁した。
「……それって?」
「…はぁ、ご飯できたから降りてきなよ」
有一郎はうんざりした顔で僕を見てから部屋を出て行った。
ずっと、ずっと欲しくてたまらなかった椿姫さんを手に入れられる。
そう思うと楽しみで仕方がなかった。
❄︎