第14章 きみは手のひらの上 罪と罰❄︎【善逸・無一郎】
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『わたしね、少し気になってた先輩に告白されたの。OK出そうかなって思ってて。あ、返事は夏休み中に会ったときでって言われててね…』
椿姫お姉さんははにかんだ表情でそう言った。
僕が返事を返さないことさえも気づいていないのか、椿姫お姉さんはそのまま話し続ける。
僕はその言葉を理解できなくて、何度も何度も頭の中でその言葉を繰り返し、何度も何度も咀嚼して理解した。
この恋心が椿姫お姉さんに届くように、僕の気持ちを椿姫お姉さんに知って欲しくて……
僕は…
僕たちは、手を組んだんだーーーーー
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「こんな所に呼び出してごめん、大切な話があってさ」
『あ、いえ、大丈夫です』
わたしは放課後、ひとつ年上の先輩…校内で五本指に入るイケメンな先輩に、告白するには定番すぎるであろう校舎裏に呼び出され来ていた。
わたしは先輩に対して恋愛感情がある。
だからといって、告白をしないのか?と聞かれたら答えはNO。
だって先輩は男女ともに人気があり、ライバルがすごく多いから。
告白して、断られたりしたら辛いし、同じ学年ではないがいつどこで会うか分からないから当たって砕けろ!っていう選択肢はそもそも存在しない。
もし、もし、告白をするのなら。
先輩が卒業する日、と決めていた。
それなら当たって砕けても、会う心配がないから。
そう思っていたのに…
朝、下駄箱を覗くと封筒が入っていて、人のいない場所に行き中身を確認すると、まさかの呼び出しだった。
朝から浮かれているわたしは友だちに心配される有様だった。
「えっと…大切な話ってのがさ…オレ、雪柳さんがずっと前から好きだったんだ…!」
『!!』
「だから…返事はあとでほしい!」
先輩はそう言うと、わたしの手にメモを押し付けると
「えっと…じゃっ!!」
と真っ赤な顔で走り去ってしまった。
『まさかの言い逃げ…?』
わたしは頬が赤くなるのを感じつつ、手のひらのメモを開くとそこには連絡先が書かれていた。
『…好きなの、わたしだけじゃなかったんだ』
わたしはふふふっと笑い、浮かれるのを隠すように頬をぱちんと軽く叩くとその場を後にした。
まさかこのやりとりを見られていたなんて…
そのときのわたしは知りもしなかった。
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