第13章 たくさんの幸せと少しの涙【不死川実弥】
そういうと椿姫はバッと勢いよく顔を上げた。
『え…』
その顔は泣いた後のようで、目元が赤くなり心做しか瞼が腫れているように見える。
「今日は兄弟みんなで出かけてたんだ。そしたら久しぶりにいとこにあったんだよ、一つ下の弟…次男と同い年のだ」
『そ、っかぁ…よかったぁ…』
そういうと椿姫はぼろぼろと大粒の涙をこぼし、泣き始めた。
俺は椿姫の隣に座り直すと、ぎゅっと抱き寄せ頭を優しく何度も撫でる。
『浮気、してるのかなって…不安で…お腹に赤ちゃんいて…嬉しかったのに…』
言葉に詰まりながら椿姫は口にした。
「あぁ…誰と出かけるか言ってなかったよな、ごめんな」
椿姫は泣きながら首を横に振り、俺にしがみつく。
椿姫が落ち着くまで頭を撫でたり、背中をぽんぽんと叩く。
しばらくすると鼻を啜りながら椿姫が顔をあげる。
「目ぇ真っ赤だなぁ」
俺はふっと笑い、椿姫の目元を撫でると椿姫は気まずそうに笑った。
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お夕飯を一緒に食べた後、きちんと話し合った。
改めてお腹に赤ちゃんがいること、いつ入籍するか、挙式を挙げるかどうか、これから引っ越しをするかどうかなどあげればキリがないくらい話した。
「避妊しなかったしな、出来てるだろうなとは思ってた」
と実弥さんはまだまだ目立たないわたしのお腹を撫でる。
『そうだね。結婚を視野に入れていたけどね、まさかこんなに早く妊娠するとは思ってなかったよ』
「まぁな…子どもができたから責任を取る結婚じゃねーぞ。俺はお前が…椿姫が好きだ。椿姫との子どもなら可愛いだろうなって思ったから結婚するんだ」
実弥さんは強い意志を持った目で私を見つめた。
わたしはふふふっと笑ってから
『そうだね、わたしも実弥さんが大好きよ。実弥さんとの子どもだもの、きっと可愛くて、優しい子になる気がするの』
実弥さんはわたしに寄り添うように、これからの話に花を咲かせた。
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実弥さんによく似たきれいな瞳、わたしによく似た黒い髪の毛の可愛らしい女の子が産まれるのはまた別のお話。
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Fin.
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