第2章 さよなら、愛しい人【伊黒小芭内】
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さよなら、愛しい人。
わたしはなにも後悔してないわ。
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『あら、伊黒さん。これからお館様のところですか?』
わたしは、少し前を歩く伊黒さんに気付くと、その後ろ姿に声をかけた。
伊黒さんは立ち止まると、ほんの少し首を後ろに回し、わたしの姿を頭のてっぺんから足の先まで見る。
わたしの姿格好が変なのかと、わたしも釣られて見える範囲で見返した。
時透くんの隊服によく似た隊服だが、一部違う部分があるといえば、袴の丈がミニ丈ということくらい。
羽織りは全体的に白で裾にかけて水色のグラデーションに、所々にある雪の結晶の刺繍がある羽織りを羽織っている。
黒のニーソに膝下の黒のブーツを着用している。
どこも変なところはないはずだ。
『あの…わたし、どこか変ですか?』
自分で見返しても分からなかったため、伊黒さんに聞いてみることにした。
伊黒さんはくるりとこちらを向くと手をこちらに伸ばしてきた。
『え、あ、あの…?』
伊黒さんはわたしの前髪に触り、
「…はねてる」
前髪を直してくれたようだった。
わたしは顔が赤くなるのを抑えられず、頬を両手で押さえた。
『ひ、ぁぁ……伊黒さん、そんなキャラじゃないですよね…どうしたんですか……』
変にドキドキする胸を押さえるように、伊黒さんを見上げる。
伊黒さんは目が合うとすぐに視線を逸らし、ぼそりと呟いた。
「いや…これからお館様のところに行くんだ。きちんとしてないのはどうかと思う…」
そういうとくるりと踵を返し、先に行ってしまう。
『あ、わたしも同じ場所なので一緒に行きますっ!』
伊黒さんの後を追うようにほんの少し走る。
伊黒さんに追いつくと、わたしは並んで歩いた。
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