第8章 令和時代からこんにちは【伊黒小芭内】
金曜日は一緒に帰ることを約束していたことに。
『あー…これ、怒られちゃうかも…』
わたしはあははーと笑い、制服から着替える。
そういえば、と下着を見るとぐっしょり濡れていたのが嘘のようになにもなかった。
『あれは…夢だったのかな…?』
と思いつつ、洗濯物を洗濯かごに入れた。
❄︎
帰ってきた小芭内さんはとても不機嫌だった。
それもそうだろう、約束をすっぽかされて先に帰られたのだ。
『小芭内、さん…?ごめんなさい…』
わたしは不機嫌な小芭内さんの隣りに座る。
小芭内さんは不機嫌なまま、わたしを抱き寄せた。
『今日が金曜日だって忘れてたの…』
わたしはそう言った。
『そういえば…わたし、いつの間にか大正時代に行ってたのよね』
と、ぽつりと呟くと小芭内さんの身体がぴくりと反応した。
「…ほう…」
小芭内さんの声のトーンが少し下がった。
あれ?と思ったときにはときすでに遅く、わたしは小芭内さんに組み敷かれていた。
『あれ?小芭内、さん…?』
「やっと思い出したか、椿姫…いや、あの時は柚姫、だっか?」
あ、これはまずい…と思いつつも、どうすることもできなかった。
そのあと、朝まで小芭内さんに離してもらえず、その日1日は腰が痛すぎて動けなかったのはまた別の話…
❄︎
どうして小芭内さんがそれを知っていたのかは、前世の記憶だからだそうだ。
わたしにはそんな記憶ないよ、と思いつつ反論も出来なかった。
書き置きした手紙にも文句を言われた。
たしか、書き置きした内容は
椿姫さん、小芭内さんとお幸せに!
小芭内さん、椿姫さんを大事にしてくださいね
愛妻家になると思うので心配はいらないと思いますけど
だった気がする…。
『良いじゃないですか、わたしたちが幸せなら』
わたしはそう言うと、小芭内さんに擦り寄った。
わたしは、大正時代のわたしたちの恋のキューピットだったのかな?と思ったのだった。
❄︎
Fin.
❄︎