それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第8章 弱者は仕込む
その日は酷く具合が悪かった。
こちらの世界に来てから回数の減っていた月のものが、スノーの腹に襲来していたのだ。
元々かなり症状が重たいスノーにとって、久しく襲いかかるこの不快感と痛みは耐え難いものである。
スノーはその秀麗な眉を寄せ、ふぅと息をつく。
痛みで思考がまとまらない。
せっかくこちらの世界の理論やアプローチを組み入れようと、図書館から本を借りているというのに。
全く進まなくなったペンを置き、天井を仰ぎみる。
確か本の返却期限が今日までのはずだ。
返却するのも、延長するのも、図書館まで行かねばならない。
薄い唇から、再度ふぅとため息が漏れる。
致し方ない、続きはモーニングティーの後に図書館で進めよう。
授業中ならば人も少ないはずだ、邪魔されること少ないだろう。
うまく回らない頭をフル回転させ、スノーは羊皮紙をファイリングした。
何冊かのファイルと本を小脇に抱え、ノロノロとキッチンへと足をむける。
いつもはなんてことない階段が、やたら長く感じる。
温かい紅茶を腹におさめれば、多少は痛みもマシになるだろう。
そんな気休めを己に言い聞かせながらキッチンに足を踏み入れる。
あまりにも具合が悪くて周りが見えていなかったのだ。
ドンッと何かにぶつかり、力の入らない腕からはファイルと本がバサバサと床へと散らばった。
「わっ…
すみません、スノー先輩」
グリムに何かを話しかけながらキッチンを出ようとしていたユウと正面衝突するなんて、いつものスノーならばありえない事だ。
「おやまぁ…
こちらこそごめんね、ユウ。
ちょっとぼーっとしていたようだ…。」