第21章 スイカ
ー穂波sideー
「穂波ちゃん、孤爪くん来てるよ?」
『へっ?』
散歩して帰ってきて、
さっき研磨くんと階段のとこでおやすみして上がってきたんだけど…
『研磨くん、どうした?』
「…ちょっと、もっかい会いたくなっただけ」
きゅうううん ずっきゅううううん
『…ん。嬉しい。 歩こっか』
「…ん」
手を繋いで歩くんだけど、
ほんとに会いたくなっただけなのかな?
なーんにも喋らない。そして、すごく眠そう。
「階段、この上行ったことある?」
『ううん、ないよ』
「ちょっと、上がろ。キスしたい」
『へっ』
「いいから」
手を握る力が少し強くなって、
階段を登ってく
踊り場も過ぎて4階に着くとぐっと腕を引っ張られ
唇が奪われた
何度も何度も優しく啄むようにキスをする
キスしながら押されて、教室のドアに背中があたる。
特別教室ぽいし鍵閉まってるかなって体重をあずけると
『 ! 』
「…あれ、鍵開いてる」
ドアがスライドしてよろめいた。
「穂波、大丈夫?」
『…ん。びっくりしたぁ』
「…家庭科室?作業台ある…」
『…かなぁ? 入ってみる?』
手を繋いで2人で暗い家庭科室を歩いた。
『…生物室じゃなくてよかったぁ』
「…?」
『研磨くん、きょとん』
「…?」
『…ふふ。研磨くんにこわいものってある?』
「こわいもの…」
『苦手、じゃなくてこわいもの』
「………」
『………』
「あるけど、言わない」
『…?』
「…ふぁぁ〜」
『眠いね。もう、寝る?』
「…ん。でももうちょっとだけ」
校舎と木々のシルエットと
それから空に月が見えるだけの窓からの景色を
並んで2人、ぼーっと眺めた。
『…はぁ、幸せ』
「…ん。そろそろ行こっか」
『…ん』
手を繋いでゆっくり部屋まで帰った。
…なんだったんだろ。
部屋に来た時に感じた研磨くんから感じた小さな切迫感は
すーっと消えていったように思う。