第3章 参.役に立たない誇り
一番近くの隊士の元へ近付き、口に巻かれている布をとる。
「小芭内は?」
「こ、恋柱様と食事処へ行かれました」
「そっか…。じゃあ不死川実弥が来たって伝えてもらってもいい?」
「え?あ、はい」
誰だろう…という目で見つめる隊士だが、は名乗らずその馬を後にすることにしたようだ。
柱以外に甲の女隊士がいるという話は知られているが、実際に会ったことがある隊士なんてそれこそ竈門と我妻、猪頭くらいじゃねぇか。
柱もなかなか会えるもんじゃねぇし、ましてや途中からいなかったしな。
柱稽古の時にも話題になっていたのも知っている。
柱ではないから稽古はしないにしても、どこかの柱のところで手伝いかなんかはするんじゃないかと。
現に煉獄がよく俺の打ち込み稽古は手伝いにきてくれる。
「わたし、このまま悲鳴嶼さんのとこに行ってきますけど…実弥さんは自分の屋敷戻ってますか?」
「あーそうだな……。
竈門もいるし恐らく玄弥もそこにいるはずだァ、行けねぇな」
「弟くん…!会えたら嬉しいな」
「余計なこと言うなよォ」
「分かってますよ。
じゃあこのまま悲鳴嶼さんとこ行ったら実弥さんのとこ戻ってきますね」
そう言い悲鳴嶼さんの屋敷へと向かっていく後ろ姿を見送った。
自分の屋敷へ着くと、隠が屋根の修理をしてくれていたので俺も手伝おうと思い屋根へあがる。
「悪ィな、修理まで」
「いえ、様が戻られて俺達も嬉しいので、こんなの苦じゃありません」
「あーてめェデレデレしてやがったな」
「いやだって優しいんですもん!俺だけじゃないし!」
「あーそうかよ。
でもお前知らねぇと思うが、怒ると怖ェからなあいつ」
「柱と並んでる方ですもんね…」
冨岡に対して怒ってる時しか見たことねぇけど。
隠とトントンと音を響かせながら屋根の修理を続けていると、夕日が色濃くなりそろそろ夜になる頃だった。
一時的な修理にしては充分すぎる出来だった。
その頃ちょうどがやってきて、同時に伊黒の鎹鴉も手紙を持ってきた。
今帰ってきたが今から俺の屋敷に来るのは面倒なので煉獄と甘露寺がいてよければ明日稽古が終わってから行くという内容だった。