第3章 参.役に立たない誇り
宇髄はまだしばらく蝶屋敷に居なければいけないので明日産屋敷へ行けないことを残念そうにしていたが、 近状は報告すると約束して自分の屋敷へ戻り睡眠をとることにした。
しかし、一向に眠れなかった。
鬼の血が流れていながらも人間で居続けた。
鬼になった直後こそ自我はなかったが、必死に抗い続けていた。
そして落ち着いた頃には、会話もできたし記憶があるようだった。
耐性があるというのが正しいのかは分からないが、やはり鬼の血を取り込まれているだけあって特異体質なんだろう。
だからこそお館様は可能性を見出し、珠世というやつに竈門を使って間接的に協力してもらおうと考えられたに違いない。
詳しくは知らないが、今までにない事例から研究も兼ねて協力することにしたんじゃねぇかな……。
にしてもしばらく会えない、か……。
そもそも本当に信用してもいいんだろうか。
遣いのものが鬼と伊黒が言っていた。
手出しこそしてこないが、鬼を従えてるってどんなやつだよ。
……眠れねェ。
目を閉じてを思い出す。
ふわっと軽やかで、滑らかそうな長い髪の毛と、本人に自覚はないが脱力感でボケーっとしているあの表情。
あの顔が笑顔になった時がたまらなく愛しいと感じる。
あの八重歯も可愛いが、それを言ったら嫌なことを思い出させてしまう。
次に会えた時は、必ず俺が守りきろう。
例え反対して頸を斬ろうとするやつがいても、鬼舞辻無惨にまた狙われることになっても、必ず俺が守る。
そして平和になったら結婚しよう。
ゆっくりでいいから人間に戻す薬を作ってもらって、戻れたら子どもに囲まれて暮らしてくんだ。
その子どもらを幸せにしてやればいい。
よしそうしよう。
明日まず産屋敷の前に、の屋敷へ行ってそこの隠たちにしばらく帰ってこられないことを伝えなければならない。
もう聞いてるかもしれないが。
そしたら……
ぐるぐると駆け巡る思いの最中、俺は気付いたら眠れていたようだった。
「不死川様ー…?」
「……いつの間に寝てたんだァ」
「朝ごはんができております」
「今行く」
隠に声をかけられ目が覚めた時には既に朝だった。
早く準備していかねーとな……。