第3章 後朝
ユウは猛烈な喉の渇きを覚えて覚醒し、起き上がろうとした。上体を起こした途端にじんわりした痛みを訴える腰。鎖骨や谷間に集中する紅い鬱血痕。そして、隣に寝ている美しい男。端整ですっきりした顔立ちが、薄闇で余裕なさげに歪む様を思い出して頬に血が上った。
「…先輩。」
ガサガサした声を気に止めず、自分より筋張った手首の、丁度脈を測れる辺りに唇で触れる。すると、一気に引っ張り込まれ、抱き止められ、頬を撫でられた。
「君は随分かわいらしいことをするんだな。」
濃灰色の瞳が柔らかに細められユウの裸体を映す。
「おはよう。喉が渇いただろう。」
ジャミルが寝台近くに置いていた吸い飲みから一口水を含み、ユウに口移しで飲ませる。ほんの少し体温の移ったぬるい液体は肉桂のような、梔子のような甘い味がした。
「…ぷはっ、あー、あー…うん、渇き、治まりました。」
「そうか。…」
じわじわと絡み合った指先から、愛情が染みてくるような。じんわりした痛みさえ愛しいような。幸せな白い朝。