第13章 やりたいこと 上
「ほら、水飲んだら靴脱げ」
籠った空気を変えるため窓を開けながら言うと、サクが小さい子どもみたいに足をバタバタしながら「もう起きれませーん」とふざけた口調で言う。
「お前ね、さっき水飲むとき起き上がってたでしょ」
「それでもう力尽きました」
サクは相変わらず上機嫌でクスクスと笑っている。
ふつうなら面倒くさい酔っ払いだが、惚れた弱みだろうか。
それさえ可愛く思えてしまい、表面上は呆れ顔を装ってため息をつきながらも、サクに近づき靴を脱がしてやる。
玄関に靴を置き、もう一度ベッドに戻るとサクの背を少し起こして邪魔そうなベストも脱がす。
ふー、と気持ちよさそうに目を閉じて、サクがベッドの上で大の字になる。
「……上機嫌だね」
ベッドの端に腰掛けサクの乱れた髪を撫でつける。
「だって、先輩も一緒だったから」
「え……?」
思いがけない言葉にサクを見ると、いつの間にか目を開いたサクの、酔って潤んだ瞳と目が合う。
「普段みんなで行く時はあまり先輩は来てくれないけど、今日は一緒で嬉しかったんです。
嬉しくて、つい調子に乗って飲みすぎました」
オレと一緒だったから、あんなはしゃいでたの?
サクの言葉一つで今までの胸のモヤモヤが消えていく。
「それは飲みすぎた言い訳にはならないでしょ」
口では悪態をつきながらも、クスリと笑って体を倒しサクに優しく口付ける。
「ん……」
すぐに離れた唇を追うように、サクがオレの頭を引き寄せて、もう一度キスする。
「先輩、もっと。
もっとしてください」
サクの言葉にオレの体は一気に熱くなる。
普段のサクはこういう雰囲気になると、恥ずかしがってあまり自分の要求は言わない。
そういうサクもすごく可愛いけど、酒のせいか、積極的な今日のサクにすごく煽られてしまう。
オレはギシっとベッドの上に乗り上げると、今度は性急にサクの唇を奪った。
深く、浅く、時には唇を甘く噛んでサクの唇を堪能してから顔を上げると、お酒のせいだけではなく潤んだサクの瞳が、欲情の色を灯してオレを誘っている。