第13章 やりたいこと 上
夜、お風呂に入ってベッドに潜り込んでからも、昼間の三代目との会話が頭から離れなかった。
やりたいこと、かぁ。
子どもたちを助けたいっていっても、どうしたらいいんだろう。
孤児院みたいなところを開く?とか?
そんなことが、わたしにできるんだろうか。
そもそもそれで問題は解決するのかな……。
手を暗い天井に向かって伸ばして掲げてみる。
この小さい手でできることはなんだろう……。
そのときコンっとベッド近くの窓を小さく叩く音がした。
ベッドから降りてカーテンをめくり、カラリと窓を開けるとカカシ先輩が立っていた。
「あ、まだ起きてた」
少し疲れた顔をしてベランダに立った先輩は、泥だらけの暗部装束を纏っていて任務終わりだとすぐにわかった。
それでも会いにきてくれたんだと、嬉しくなる。
「お疲れ様でした!
入ってください」
「んーん。
汚しちゃうし、顔見にきただけだからここで。
ごめんね。もう寝ようとしてたでしょ」
電気の消えた部屋をチラリと見て、先輩が申し訳なさそうに謝る。
「考えごとして眠れなかったから、全然大丈夫です」
わたしは先輩のいるベランダにつっかけを履いて出ると、先輩の前に立ち、抱きつく。
「オレ、ドロドロだから汚れちゃうよ」
困り顔で少しでもわたしが汚れないように手を挙げる先輩に、わたしはさらに力を込めて抱きつく。
「後で着替えるから、いいです。
今は、こうしたい……」
しばらく迷ってた先輩が、そっと背中に腕を回して抱きしめ返してくれる。
心が満たされるのを感じて、わたしはふぅと息を吐いた。
「何考えてたの?」
「今日三代目に会って将来のことを聞かれたから、そのことを考えてました」
「将来?」
「はい。何かやりたいことはあるのかって。
先輩は、何かありますか?」
「……考えたこと、なかったかも」
しばらく考えてから、先輩がポツリとこぼす。
「わたしもです。
でも、先輩って案外めんどう見がいいから、先生とかできそう」
抱き合ったまま見上げると、先輩が面食らった顔をする。