第13章 やりたいこと 上
季節はすっかり夏。
濃い影を落とすギラギラした太陽を目一杯浴び、向かった先は木の葉の里を一望できる場所。
汗が流れるのも気にせず全速力で駆ける。
目的の場所に着くと、開けた場所に心地よい風が吹き抜けて熱った体を少し冷やしてくれる。
目を閉じて風を受けていると、「サク」と待ち人の声が聞こえ、振り向くとそこには笑顔の三代目が愛用のキセルを持って立っていた。
「3代目、お疲れ様です」
横に並ぶ三代目のキセルに火遁で小さな火を灯す。
ここで話すときの2人のいつもの儀式みたいなもの。
3代目が美味しそうに煙を吸い込み、吐き出す。
細い煙が真っ青な空にゆっくりと上っていく。
わたしは柵に肘をついてもたれながら、その煙を目で追う。
「すまんな。
熱い日に外で」
里を見下ろしながら、三代目が穏やかな笑みを浮かべる。
「いえ、三代目は室内で座ってなきゃいけない時間が長いから、こうやって少しは外に出て太陽を浴びないと体によくないです」
「サクに心配されるようになるとは、ワシも焼きがまわったの」と、はっはっはと快活に三代目が笑う。
父親替わりのこの人の笑顔は、いつでもわたしに元気をくれる。
自然に笑顔が溢れたわたしに満足そうに頷くと、三代目が話を変える、
「暗部に行って一年が過ぎたな。
どうじゃ、暗部は」
「はい。
仲間に助けられながら、なんとかやってます」
ふふ、と小さく三代目が笑う。
「そうか。
それは良かった。
活躍は聞いておるぞ。
幻術がさらに冴え渡っとるそうじゃな」
普段なかなか褒められることはないので、照れくさくて頭をかく。
「全部、わたしを育ててくれた3代目のおかげです」
感謝を伝えるために三代目の方を向くと、真剣な三代目の目とぶつかる。
「全部、サクの努力の賜物じゃ」
真剣に告げられた嬉しい言葉に、照れを隠すように笑う。
「へへ。ありがとうございます」
「うむ」
くしゃりと小さい子にするみたいに頭を撫でられる。
しわが増えた、安心する大きな手。
自分が守られているような気持ちになり、少しくすぐったい。