第12章 甘い休日
約束の金曜日。
任務を終えいつものようにシャワーを浴びると、はやる気持ちをおさえサクの家へと向かう。
ほんと、らしくないな……。
早くあの笑顔を見たい。
抱きしめたい。
全部、オレだけのものにしたい……。
自分の中にある今まで感じたことのない激しい感情を持て余したまま、オレはサクの家へと続く道を急いだ。
民家の屋根の上を跳んでいると、サクの部屋のベランダに人影が見えた。
オレは気配を消してその場所を目指し、音もなくベランダの柵に降りたった。
「よ」
「わぁっ!!せせせせ先輩っ!?」
いつものように片手をあげると、驚いた顔のサクと目が合う。
「ふふ、驚きすぎでしょ」
「だだだって、普通ベランダからくるなんて思わないじゃないですかっ!!」
「サクが見えたから、早く会いたかったの」
スト、とベランダに降り立ち、甘えるようにサクの肩口に顔を寄せると、サクが「わたしも……です」と小さな声で答える。
嬉しくて顔が緩むのを感じながら、抱き寄せてその柔らかな頬に口付ける。
触れたサクの体は外にいたからかいつもより冷たくて、よく見ると風呂に入ったのか、髪も微かに濡れている。
「体、冷たい。ずっと外にいたの?
風邪ひくよ」
「部屋にいても、落ち着かなくて……」
「なんで?」
理由は分かっているけれど、ちょっと意地悪したくなってサクの耳元で囁くと、サクが困った顔でオレを見る。
「っなんでって……、えっと……」
しどろもどろになったサクの頭をポンっと撫でる。
「ふ、ごめん、ちょっとからかいたくなった。」
「っ……。もう!先輩!!」
顔を赤く染めてサクがオレの胸を軽く叩く。
あーもう。
いちいち何でこんなに可愛いんだろう。
顔が緩んで仕方がない。
オレはもう一度サクを腕の中に抱きしめた。
「サクが嫌なら、何にもしないから……。
大丈夫だよ」
するとサクが慌てて顔を上げる。
「嫌じゃないんです!
ただ、初めてだから緊張するというか……。
どんな顔していいかわからないというか……」