第9章 2度目のファーストキス
夕方の6時、わたしは待ち合わせ場所でハナが来るのを待っていた。
「サク、お待たせ!」
ハナの声に振り返ろうした瞬間、いきなり後ろから目隠しされて、何人かに体を押さえられ車椅子らしきものに座らされる。
訳がわからず、ガラガラとすごい勢いで進む車椅子にギャーギャー言っていると、ある場所で車椅子が止まり、今度は両手をとられて立たされる。
ガラガラと引き戸を開けるような音がして、その瞬間目隠しをとかれ、わたしは眩しさに目を細めた。
「サク、退院と誕生日おめでとう〜!!!」
パチパチと瞬きすると、みんなでよく行く料理屋の見慣れた風景と、たくさんの料理。
そして同期のみんなの満面の笑顔がそこにはあった。
「えっ、わっ、えと、ありがとう!!!」
これって誕生日のサプライズパーティー!?
いきなりのことに、驚きと嬉しさで胸がいっぱいになる。
「おいおい、何涙目になってんだよ!」
「本当は明日当日にお祝いしたかったのに、ごめんね。
今日の方がみんな集まれたからさ」
「今日は、騒ぐぞ〜!!」
「おめでとーう!!」
みんなが口々にお祝いの言葉をくれる。
わたしは誕生日席に誘導され、みんなと一緒に食べて、飲んで、はしゃぎまくった。
「あー、楽しかったぁ……。
なんか、喋りすぎかな?声、枯れちゃった……」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、帰り道、家の方向が一緒のゲンとゆっくりと夜道を歩く。
「今日はありがと!
すんごい嬉しかった」
「おう……」
いつもは元気でよくしゃべるゲンが今日はなぜか上の空で、変に思ったわたしはゲンの顔を覗き込んだ。
「どしたの?
疲れちゃった?
あ、今日朝から任務だったって言ってたもんね。
大変だったの?」
「いや……」
チラリと目を一瞬だけ合わせてすぐに逸らすと、ゲンが小さな公園を指差す。
「サク、ちょっと寄り道してかねぇ?」
なにか悩み事かな?
いつもと違うゲンを不思議に思いながらも、わたしは「うん」と返事をした。