第1章 雨宿り
先程から降り出した雨。
どんどんひどくなり、今では少し先も見えない程の土砂降りになってしまった。
ぬかるむ足元。
散らばる忍具。
最悪の環境の中、敵を蹴散らす。
トン、と背後にカカシ先輩がくる。
「サク、状況が悪すぎる。
引くぞ。」
「はい!」
先輩が土の壁を作り、闇に紛れながら、暗がりの森の中をひたすら駆ける。
雨のおかげで、敵も匂いを負うことはできないだろう。
身を隠せる場所を探していると、丘の麓に小さな横穴を見つけ、先輩に指で示し頷き合う。
穴の中には焚き火の跡や毛布があり、数日のうちに人が使ったことが窺える。
「狩人が休むのに使っている穴でしょうか…。」
ここらへんは、猪や鹿がよく現れる。
「どうだろうね…。
ま、なんにしても助かった。
このひどい雨が収まるまで、ここで休もう。」
「はい。」
先輩はキツネの、わたしはリスの面をそれぞれ取る。
まだ秋と言うには早い季節だが、びしょ濡れになるとさすがに寒い。
運良くたくさん残っていた薪に火をつける。
カカシ先輩がおもむろにクナイをロープの両端に結び、岩の隙間に刺し、ベストとアンダーを脱ぎ、絞ってかける。
逞しい体を目の当たりにしてしまい、思わず目を背ける。
「後ろ向いてるから、お前も脱いじゃいなよ。
風邪ひくよ。」
「えっ!?」
わたしも、一応年頃の女子だ。
戸惑っていると、
「お前の体になんか興味ないから…。」
はぁ…。
面倒くさいと言わんばかりに、大袈裟にため息をつかれる。
ムッとなりながらも、このままだと本当に風邪をひいてしまいそうだから、片隅に置かれていた毛布を引き寄せ、その中で脱ぎ、下着だけになる。
チラリと先輩を見ると、本当に律儀に後ろを向いて座っている。
服を絞り、同じようにロープに服をかける。
その時、先輩がクシュ!とくしゃみをした。
穴にある毛布は一枚。
少し迷ったが、先輩と背中合わせになるように座ると、ぐる、と2人を囲うように毛布を被る。
「オレはいいからサクが被っときなよ。」
「先輩に風邪なんて引かせたら、あとで、ろ班のみんなになんて言われるかわからないですから…。」
「何そのよくわかんない理由。」
クス、と先輩が笑う。