第20章 訃報
早く!早く!早く!!!ーーー
森の中を駆ける。
あまりに早く駆けすぎて、頬や腕が枝や葉で傷つくが、そんなことはどうでもよかった。
早くーーー
仕事中のわたしの元に、手紙をくくり付けられた鷹が舞い降りたのが今日の夕方。
内容を見た瞬間、わたしは目の前が真っ暗になり、手に持っていたジョウロを落としてしまった。
手紙には、三代目が亡くなったこと、お葬式が明日行われることなどが書かれていた。
アンナに事情を説明して少し早めに仕事を上がったわたしは、取るものもとりあえず里へと向かった。
忍なのだから、死は当たり前。
でも、なぜか三代目はいつまでも元気で、あの場所で里を見下ろして微笑んでいる気がしていた。
わたしを見守ってくれている気がしていた。
胸が潰れてしまいそうに悲しくて、苦しくて、絶望しているのに、涙は一滴も出なかった。
夜中駆けてクタクタの体で里に着いたのは朝方。
火影邸へ入ると、ちょうどアスマがいて、ボロボロのわたしにお葬式までの間休めと言ってくれたけど、とても眠れる気がしなかった。
亡くなった三代目と対面し、今まではどこか信じられなかった死を現実として突きつけられ、お腹の底がぐちゃぐちゃになっていくような感覚に襲われ吐き気がした。
お葬式の準備のために棺が運ばれたあとは、生まれ育ったこの家をフラフラと当てもなく歩いた。
火影の仕事で忙しかったから、毎日一緒に過ごせたわけではないけれど、そこかしこに思い出があって、そのどれもが愛で溢れていた。
改めて愛情深い人だったんだと気付かされる。
わたしは少しでも、その愛情に報いることができていたのだろうか……。
どうやって葬儀場まで行ったのかもわからないまま葬儀が終わり、何も考えなくていいように、ひたすらに体を動かし片付けを手伝った。
夕方、やっとひと段落して、寝ていなくてフラフラになった頭でボーッとしていると、「オラ」とアスマに頭を小突かれた。
「あ、アスマ……」
「あ、アスマじゃねぇよ。
家の方の片付けもあらかた済んでるから、そんなとこ突っ立ってないで今日は自分の家に帰れ。
で、寝ろ。
顔、ひどいことになってんぞ」
呆れ顔で言いながらも、頭を撫でてくれる手つきはすごく優しい。
それは小さい頃から知っている『お兄ちゃん』の手だった。