第16章 サスケ
次の休みの日、アカデミーが終わる夕方を狙ってまたあの桟橋に行くと、案の定サスケくんが前みたいに座っていた。
今日は栄養が偏らないように、お弁当を作ってみた。
食べてくれるといいな。
前みたいに「こんにちは。」と声をかけると「またお前か…。」
と呆れたような声が返ってくる。
立ち上がりその場をはなれようとするサスケくんに構わず橋の淵まで行ったわたしは、印を結び「豪火球の術!!」と、口から思い切り火を吹く。
ゴォォっと燃え上がった火は、川を濃いオレンジ色に染め上げ、そして消えた。
チラリと振り返ると、サスケくんがこちらを見て棒立ちになっている。
「お前…。」
呆然と呟くサスケくんに近づきお弁当を差し出す。
「これを食べるなら、さっきの術も、それ以上も、強くなれる技、教えてあげる。
ちなみにこれはわたしが作ったお弁当で、毒も入ってないよ。」
挑発するようにお弁当を眼前につるしてサスケくんを見る。
「……、んで。」
わたしを睨みつけていた視線を下げ、サスケくんが小さな声で何か呟くが、その声は小さくて聞き取れない。
「何?」
「お前はなんで俺に構うんだよ!!」
怒りの中に困惑が見え隠れする黒い瞳を見つめ返す。
「なんで、だろ…。
ほっとけないって思った。
わたしにも家族がいないから、かな。
あ、育ててくれた人はいたんだよ!
でも、わたしは捨て子だからほんとの親は知らなくて…。」
「なんだ、不幸自慢か?
親がいないもの同士、仲良くなろうってか?
はっ、反吐が出る。」
サスケくんの顔が歪む。
こんな小さい子に、こんなことを言わせたくない…!!
「違うよ!
忍の世界は子供がいつも犠牲になる。
それが悲しくて、いつも何かできないかなって思ってるだけだよ!」
「同情なんてもっとゴメンだ!」
吐き捨てられた言葉に涙が出そうになる。
わかる、わかるよ。
誰にも同情なんてされたくないよね。
自分が惨めで可哀想なんて、死んでも思いたくないよね…。
幼い頃、幾度となくかけられた言葉や視線を思い出す。
「だったら…。
だったら、こんなとこであんな顔して川なんて眺めるんじゃない!!」