第15章 風見鶏の家
「負けた方がアイス奢りだからな」
「いいよ!ぜっったい負けない!」
ここは暗部の休憩室。
予定していた任務が急になくなり待機になったわたしとタツマは、暇を持て余し、アイスをかけてジェンガをしていた。
タツマが息を殺してそーっとブロックを抜いているときに思いきり「わっ!!!」と大声を出すと、タツマはビクッと肩を震わせわたしを睨みつけた。
「っっ!!テメっ!!!
卑怯だぞっ!!」
「へっへー!
脅かしちゃダメなんてルールないからねぇ。
タツマったら本気で怒って大人げなーい!」
「大人じゃねーし!
まだ19歳の子供だし!!」
くだらない言い合いをしていると、ガチャリとドアが空いてカカシ先輩が入ってきた。
ジェンガを挟んで対峙していたわたしたちは、そちらを振り返りそれぞれあいさつする。
「あ、お疲れース」
「先輩、お疲れ様です!!」
先輩はいつもの無表情で、「お疲れ」と短く言うと、わたしのおでこを掴んでグイっとジェンガから遠ざける。
グキッとなった首が痛い。
「ちょっと近くない?」
何のことかわからなくて、痛む首をさすりながら先輩を見上げる。
「順番にするんだし、そんなお互い近づかなくていいでしょ」
そう言うと先輩はふいっとそっぽを向いて、ポカンと口を開けて驚く私たちを無視して、とっとと定位置のベンチにゴロリと寝転がりいつもの愛読書を読み始める。
もしかして、嫉妬してくれてる?
「……え?今の何??」
タツマが呟く。
先輩と付き合っていることは秘密だから、わたしは慌てて話を逸らそうと言葉を探す。
「えっと……、ほら!タツマ早く次……」
「オレたち付き合ってるから、サクに手、ださないでね」
必死に誤魔化そうとしたわたしの言葉にかぶせ気味にそう言うと、先輩が本越しにチラリとこちらを見る。
「あ、はい。
って、えー!?
えー!!?」
心底ビックリした顔でタツマがわたしと先輩を交互に見る。
わたしも混乱し、先輩を見る。
「先輩、秘密だったんじゃ……!?」
「もう三代目にバレてるし、こいつなら隠す必要ないでしょ」
「あ、そか。
まぁ、そっか」
まだ動揺してるから、変な返事をしてしまう。
「うわー。マジか。
はー。ビビったー」
ボリボリ頭をかきながらタツマはまだはー、とかほー、とか言っている。