第14章 やりたいこと 下
ジャー……
水を流す音が聞こえて、意識が浮上する。
ふわ、と大きなあくびをしてゆっくりと目を瞬く。
ああ、そっか。
昨日は飲んで、そのままサクん家に泊まったんだっけ。
隣にあったはずの温もりはもうなく、サクの匂いのする布団からむくりと起き上がる。
「あ、先輩。おはようございます!」
「ん、おはよ……」
ベッドのへりに座りしばらくボーっとしてから、キッチンにいるサクのもとへ行き、作業の邪魔にならない程度に背中から抱きつくと、サクがふふ、と笑う。
部屋にはすでに出汁のいい匂いが充満していた。
「いい匂い……。
朝メシ作ってくれたの?」
「はい!
もうすぐできますよ」
「ありがと」
サクの首元に鼻を寄せると、微かにボディソープの匂いがした。
「サクも、いい匂いする……」
首がくすぐったいのかサクが微かに身を捩らせる。
「昨日あのまま寝ちゃったから、起きてシャワー浴びたんです」
「起こしてくれたら、一緒に入ったのに……」
「はっ、入らないですから!」
もう隅から隅まで見ちゃってるから今さらなのに、いつまでも初心なサクに笑みが漏れる。
赤くなった顔を確かめたくてサクの顔を覗き込むと、案の定真っ赤な顔でプリプリしている。
可愛い反応に触れたくなって、顔を逸らそうとしたサクにふわりと触れるだけのキスをすると、至近距離で目と目が合う。
「シた次の日のサクの目って、なんかエロいよね」
「え、エロくない!!」
「エロいよ。
なんか潤んでて、誘われてるみたい」
回された手から逃れようともがくサクの腰のあたりに、ゆるく反応してしまったオレ自身が触れる。
「!!」
一瞬でそれが何か察したサクが、オレの方をすごい勢いで振り返る。
「っ、昨日3回もしたのにっ!!!」
「昨日のサクを思い出したら、つい、ね」
悪びれずに言い、さらに密着するように抱きつくと、サクがくるりと回って腕から逃れ、オレの背中を押してくる。
「もう今日はダメです!
もうすぐごはんだから、先輩もはやくシャワー浴びてきちゃってください!」
「えー」
「えーじゃない!!」