第4章 未来なんて【ジェイ監】※微裏(裏)
この世界に戻ってきて何年か経った。
ようやくグリムのいない部屋の静けさに慣れた。
私は大学生になり、春休みを迎えた。
あちらの世界の流れはゆっくりだったのか、帰ってきてもなにも支障は無かった。
一緒に持って帰ってきた荷物は部屋に散乱していたけれど、傷はついていなかった。
「…よし」
私には1週間に1回ほど、行っている場所がある。
受付をすませ中に入ると、少し進んだところに大きめの水槽がある。
私はいつもここ目的で来るのだけど。
「…あ、あのウツボ。ちょっと怖そうだな」
「ふふ、そうですか?」
「…?」
ふと横を見ると、長身の男性がいた。
「いつも熱心に見られていますね。お好きなんですか?」
「ええ。なんだか可愛くないですか?ほら、あの子とか」
「…浮気されていただなんて…少し悲しいです。シクシク…」
「…!」
そうわざとらしく泣き真似をした男性は、私のイヤリングにそっと触れた。
そして、被っていた中折れハットを脱いだ。
「……………!」
「…お久しぶりですね。」
キレ長の吊り目にひし形のピアス。190ほどある背丈。右に垂れた長い黒髪。
「…っ」
「おっと…ふふ、熱烈な歓迎を…」
「ジェイド先輩っ…」
この世界に戻ってきて、少しおかしなことが分かった。
あのオルゴールには何かおまじないがかけられていたのか、記憶が少しずつ戻ってきたのだ。