第2章 IFストーリー 蝶と嘘つき狐 【注意:悲恋要素あり】
此れは、もし秀吉さんの提案で家康と夜に一緒に勉強をしなかったらの分岐ルートです。この場合は人間関係が本編とはかなり異なります。地雷の方はご注意下さい。
それは深い夜の日の事だった。しのぶは蝶屋敷で使う薬品を揃えるために家康の所に行って薬を分けてもらった後、自身に宛行われた部屋に戻り、薬を調合していた。そんな時に、廊下から足音がした。
「…?こんな時間に誰でしょうか?」
しのぶは不思議に思い、襖を開けて廊下を見た。そこに居たのは、丁度仕事から帰ってきたと思われる光秀だった。そして、光秀はしのぶに気付き駆け寄って来たが、鼻につく匂いにしのぶは顔を歪ませた。
「…クックッ…こんな夜中に、出てくるとは感心しないな。」
光秀は怪し気にしのぶに笑い掛けた。しのぶはそれを見ると、憎たらしそうに呟いた。
「…余り、近付かないで下さい。香の匂いがキツ過ぎます…。」
「…それは済まなかった。以後、気をつけよう。」
光秀はしのぶの言葉に顔を変えることもなく、当たり前のように話した。
「…それ、前にも聞きましたよ。…いい加減、その仕事って辞められないんですか?」
しのぶは心配する様に光秀を見た。その視線を受けた彼は淡々と話した。
「それは、出来ないな。…織田軍の情報源だ。やすやすと手放す事などあり得ない。」
「…そうですか、だったらせめてその香の匂いを何とかしてください。」
しのぶは俯向きながら呟いた。それを見ていた、光秀は少しだけ口角を上げて彼女を見た。
「…善処しよう。…お前も、もう早く寝ろ。」
そう言って、光秀はしのぶの頭を優しく撫でると、その場を去った。その後ろ姿を見ていたしのぶは呟いた。
「…本当に、馬鹿な人。」
香の匂いは深い夜に染み込んでいくようだった。その日の夜は嘘つきの狐が蝶に少しだけ素顔を見せた瞬間だった。
ちゅんちゅん…
「おはようございます、姫様。」
「…おはよう、陽。」
しのぶはいつもと変わらない陽の顔に落ち着きながらも淡々と支度を済ませた。用意を済ませると陽は大広間にしのぶと一緒に歩いて行く。その途中で、家康と政宗に出会った。
「よう、しのぶ。おはよ。」
「おはようございます、政宗さん。…あと、家康さんも。」
そう言って、しのぶはチラッと彼の方を見た。
「…おはよ。…なんでそんな取ってつけたように言う訳?」