第25章 ルカ編
「おはようナワーブ」
「んぁ?…夏葉か。はよ」
ナワーブと挨拶をかわし、丁度隣が空いていたから座ろうとする。
「駄目。私と夏葉はこっち」
ルカに止められ、はじっこの席に誘導される。
私が一番はじっこだから、隣にはルカしかこない。
「トレーを持ってくる。待っていてくれ」
「んー」
軽く受け流し、テーブルに突っ伏す。
ルカに散々言ってはいたものの、私も昨日は寝てないんだよな。少し眠い。
「…夏葉、バルサくんとすっごく仲いいね。大事にされてるし。うらやましいなぁ、誰かに愛されるのって」
そう言ってきたのはトレイシー。
彼女は、昔父親から貰ったという懐中時計を泣きそうな、けれど優しい瞳で見つめている。
「……ああ、とても大切にされているとは思うな」
こんな彼女の状態を見て、間違ってでも「要らない愛だ」なんて言えない。
「へぇ、嬉しいな?そんなふうに思ってくれていたのは。トレイシー、今からは私だけの夏葉だよ」
「はーい。じゃーね、夏葉っ!」
行っちゃった、可愛い天使ちゃん。
遠くから眺めてるだけでも十分か。
「……ねぇ夏葉、聞いてる?」
「あぁごめん、聞いてない」
エマとトレイシーの様子をほのぼのと見ていると、ルカに肩を叩かれた。
ぶつぶつ言ってたのは知ってるけど、いつものことだから聞いてなかった。
「…なんかあるの?」
私がそう聞くと、ルカがどっかからノートを取り出した。
「この機械についてなんだけど、どう思う?」
……なんだろうこれ。
「あ、これはね、電源を入れると、ここに描いてあるピンク色の部分が光るものなんだ。荘園にも、ぱぁそなるこんぴゅーたーというものがあるだろう?」
ぱぁそなるこんぴゅーたー?
……パーソナルコンピュータか。
「あれと似たようなものを作ろうと?」
満面の笑みで頷いてくる。
ううむ、かなり難易度は高いけどなぁ。まず、このデザインを考えるのにもかなりの時間を要しただろう。
「ここは私の知らない機械がたくさんある!とても素晴らしいところだ!」
「あんな殺人ゲームに参加しておいて、よくそんなこと言えるな。怖くないの?」
「怖い!!」