第1章 第一話【出会い際のお話。】
曇り空をただぼんやりと眺めているだけの君。
そんな君に、僕は恋をした。
いつもは、ただ友達として……親友として見ていた。ただ、それは彼女がいつも男勝りな性格をしているからである。
こうしてぼんやりとしているだけでも、あんなに女性として見えてしまう。いや、もとから女性だが。
「やぁ、夏葉。調子はどうだい?」
彼女がこちらを向くと、焦ったように表情を変えた。
「あっ、ようイライ!お陰さまでうまくいってるよ!今日も、試合同じだよな?頑張ろうぜ!」
「ああ。」
このように、彼女は話していると男っ気のある女性なのだ。黙っていれば綺麗というやつだ。
「なぁ、イライ。」
彼女がいつもと違った様子で話しかけてくる。なにかのお願いだろうか。
「どうしたんだい?」
「今夜、俺の部屋に来い」
彼女はそう言うと走り去ってしまった。一体なんの用事だろう。今までは、大体怖い夢を見たから一緒に寝てや、梟触らせてなどで呼び出されていたが……今回もそんな感じか。
私は大して深く考えずに、自室へ戻った。
まぁ、恋をした女性からのお誘いでもあるから、嬉しくもあった。本当に、ただそれだけの気持ちだった。