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ライバルなんかじゃない!

第1章 本文


その頃公園では。

「楽しいな、兄弟ってこうなんだな」

「そうだね。僕たち、ずっと一人っ子だと思ってきたからね」

「あぁ」
「⋯⋯」
「⋯⋯」

二人の間に沈黙が流れた。辺りはもう暗くなっていた。


「輝二⋯⋯」

拓也は深い溜息をついた。

「拓也お兄ちゃん、もう暗くなってきたよ?」

「じゃあ友樹は帰っていいぜ」
「そんなぁ⋯⋯」

拓也には輝二しか見えていないのだった。

「友樹、友樹」
「え?」

囁くように友樹を呼ぶ声が聞こえた。

「友樹こっち」
「あ、泉さん!でも何で?」
「シッ⋯⋯友樹、拓也はいつまであそこにいるつもりなの?」
「僕も分からない⋯⋯」

友樹は拓也に視線を向ける。つられて純平も拓也に視線を向け、泉は呆れてため息をついた。

「はぁ⋯⋯輝二⋯⋯」

拓也はまた深い溜息をついた。

「いいこと思いついた!」

突然、泉は声を上げた。そして、友樹と純平に耳打ちをする。

「えぇ!?僕がやるの?」
「だって友樹しかできないし⋯⋯」
「うんうん」

こんな会話をしている側で、拓也はさらに一人落ち込んでいた。

「じゃあ作戦開始!」

泉の声を合図に、友樹は茂みから出ていった。

「ん!?友樹?」

拓也はすぐに異変を察知した。友樹はスタスタと輝一を輝二に近づいて行った。そして、偶然を装って友樹は話しかけた。

「あ!輝二さん、輝一さん!こんなところでどうしたの?」
「友樹こそどうしたんだ?」
「僕は⋯⋯」

友樹はそういうと、フラッと輝一の方に倒れ込んだ。

「⋯⋯!」
「⋯⋯!」

輝一と輝二はかなり動揺している。そこへ泉と純平がそっと出てきて言った。

「輝二じゃな⋯⋯と、友樹!?どうしたの!?と、とにかく急いで病院に連れていかないと!」

純平が駆け寄ると、友樹の演技がキラリと光った。友樹はとっさに輝一の服にギュッとしがみついた。

「仕方ない⋯⋯輝一がそのままついて行くしかないな」
「わかったよ⋯⋯」
「じゃあ輝二は先に帰ってて。お父さんいよろしく」
「あぁ⋯⋯」
「早く早く!」

輝二はただ立ち尽くしていた。泉は茂みの方に視線を送りそして口パクで伝える。

「拓也、今よ」

泉は笑顔を浮かべてみんなを連れて立ち去った。


「泉⋯⋯純平⋯⋯友樹⋯⋯」

拓也は茂みから出て、輝二のもとに歩いて行った。
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