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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第43章 覚悟 2


「もう行かないと」
「……もう?」
「時間ないの。ごめんね」
「忙しいんだな…わかったよ」
「ごめん……」
「謝らないで。無理しないでくれよ」


身体を離すとき、善逸は光希の額にそっと口付けを落とす。



立ち上がった光希は、花柄の羽織を脱ぐ。

「これ、家に置いといて。汚したくないから。って、だいぶ汚れたな」
「俺が洗っとくよ」
「ありがと。あと……」
「いつもの羽織な。もう出来たかな。受け取っとくよ」
「ありがとう、お願いします」


光希がキョロキョロとすると、宇髄が音もなく現れる。

「もういいのか」
「ごめん、走ろう」
「運んでやるよ」
「いや、自分で走る。身体鈍っちまう。俺の足に合わせて走ってよ」
「へいへい」


二人のやりとりを遠い目をして見つめる善逸。
その不安そうな顔に気付いた光希。

ふわりと近付き、首に抱きつく。


「覚悟、……ありがとね。大好き、善逸」

小さな声で、そう囁く。



「じゃな!」

そう笑顔で言って、走っていく光希。
宇髄と二人、あっという間に山に消えていった。


光希が人前で抱きつくなんて、あり得ない。
それだけ、善逸が特別な存在であると示してくれた。

善逸は、手元の羽織を見る。
この羽織を手渡されるのも、自分だけ。

置土産を渡していってくれた彼女に感謝して、泣きそうになるのを堪えて羽織を強く抱きしめた。


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