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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第43章 覚悟 2


木に背中をつけて、膝を抱えたままぐったりする光希。

「寝てないのか……?」
「いや、寝てるよ……」
「食ってないだろ」
「食べてる、少しは……」
「……痩せた」
「そうかな…わかんないや……疲れた…」

そのまま顔を上げない光希。


「……重いんだ、何もかも」
「うん」
「ずっと気ぃ張ってるし、しんどいし、寂しい……」
「うん。そうだな」
「でも、やらなきゃ。俺、……私がやらなきゃ」
「……いいよ、言葉。気にすんなよ。無理しないで」
「私が、そうしたいだけ」

光希が、少し疲れた柔らかな笑顔を見せる。
善逸はホッとする。


「ごめん、光希。お前が大変な時に俺はふわふわしてて」
「……本当だよ」
「ごめんなさい」
「いいよ、まあ、いつものことだもん」
「うっ……」
「善逸はああやって心の均衡を保ってる。わかってるよ、大丈夫。一人ぼっちにして、ごめんね。不安だったし、寂しかったね」

光希はそう言って悲しい音をたてる。
どこまでも優しい彼女に、胸が痛む。


「謝っても反省しても、どうせお前は三日で戻る。まあ、私は構わないよ」
「……殴ってよ」
「は?」
「俺を殴れよ。光希傷付けたんだから、殴ってよ思い切り」

善逸は光希に懇願するように言う。


「断る」
「え?」
「それはお前の甘えだ。甘ったれんなこの馬鹿。殴ってもらってすっきりしようなんざ、そうはさせるか。
良心の呵責に苛(さいな)まれればいい」
「……そっか、殴ってもらうのは、甘えか」
「そうだよー」


「なら……こうするね」

善逸が光希にそっと手を伸ばす。
座り込む光希を抱き寄せる。


「俺が、光希を甘えさせてあげないといけないのにね。馬鹿でごめん」


耳元で聞こえる善逸の声に、光希の心が解れていく。そっと目を閉じて、慣れ親しんだぬくもりに身を委ねる。


「そうだよ。支えてくれるんでしょ?」
「うん。ごめんね、光希」
「いいよ」
「ごめんなさい」
「もういいって。……今の禰豆子に話しかけるのは良いことだよ。急に距離をとったら禰豆子傷付くかもしれないから、そんなことしなくていいからね」
「……わかった」

善逸は光希をぐっと抱く。


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