第42章 覚悟
三人は部屋に入って礼をとる。
「お館様」
光希が輝哉に声をかける。
聞いたことのないその声に、悲鳴嶼が驚いて光希を見る。女の声だった。
「如月光希です。この度、総司令官の職を賜りました。師である桑島法子の名に恥じぬよう、身命を賭して戦う所存でございます」
深々と頭を下げた。
「宇髄です。この度光希より、副司令官に任ぜられました。一度引退した身ではありますが、光希を助けて参ります」
同じように頭を下げる。
「光希……」
輝哉が手を伸ばす。
「喋ってはなりません!」
そばに控えるあまねが声をかけるが、輝哉がまた口を開く。光希は輝哉の手を握る。
「ごめんね……光希が一番嫌がること、を…させる……」
「はい。本当ですよ」
この返答に、その場にいた誰もがぎょっとした。
そこは普通「そんなことありません」的なことを言うだろう、と心の中で皆が突っ込む。
「私、あんなに嫌だって言ったのに、皆で何度もやれやれ言うんですよ?もう首を縦に振るしかなかったですよ」
宇髄も悲鳴嶼も生きた心地がしなかったが、輝哉は笑った。
「は…はは、でも引き受けて、くれた……」
「ええ。私はお館様が、大好きですから」
光希は手を繋いだまま、優しく笑いかける。目の見えていない輝哉にも、雰囲気が伝わる。
「私は、鬼殺隊の皆が大好きです。だから、絶対に負けない。天元さんも、力を貸してくれます。必ず勝ちます。だから、……ご安心ください」
「あり…がとう……天元も、頼むよ……光希を、支えてあげて……」
「……はい。この命の限り」
光希は輝哉の手を布団の中にそっと戻す。
「面会を許可していただき、ありがとうございました。鬼舞辻を倒して参ります」
光希は頭を下げる。
三人は立ち上がって部屋を出る。
部屋を出る時に輝哉が呟いた。
「法子は……凄い子を育てたね……」
―――この人は策士だ
人が何を言われると一番嬉しいのか、瞬時に推測出来る力がある。
「ありがとうございます。私も繋いでいきます。未来へ。……失礼します」
礼をとって戸を閉めた。