第4章 那田蜘蛛山
「ったく、しょうがねぇなぁ……」
そう言って、光希は善逸をふわりと抱きしめた。
「よしよし。大丈夫だ。落ち着け。……な?」
ぶるぶると震える背中を、あやす様にゆっくりとんとんと叩く。
「怖いよなぁ。嫌だよなぁ。でも、行かなきゃって思うんだよな。仲間が闘いにいったもんな。助けにいかないと」
善逸の震えが少し収まってきた。
「怖くない。怖くない。大丈夫だ。俺も一緒に行くから。な?」
優しく叩かれる背中と、自分を包み込む暖かさが心地良い。
「あ、それに、お前の大事な禰豆子も炭治郎と一緒に山に入っていったぞ?お前も行かなくていいのか?」
禰豆子という言葉に、ピクリと反応する善逸。
「禰豆子ちゃん……」
「そうだよ。善逸の助けを待ってるかも」
「禰豆子ちゃん!」
善逸は立ち上がった。
光希も身体を離す。
「よし。行けるか、善逸」
「お、おう!」
まだ手足は震えているが、しっかりと前を見つめている。
「行くぞ」
光希が走り出す。善逸も続く。
「光希」
「なんだ」
「……ありがとな」
「おう」
―――…いつも俺がへこたれて泣くと、光希は抱きしめて励ましてくれた。
不甲斐ない俺を馬鹿にしたり罵ったりしないで、理解しようとして言葉をかけてくれるんだ。
こいつはきっと、俺の恐怖を取り除くのが、この世で一番上手いんだろうな…――――
炭治郎たちに少し遅れて、光希と善逸は那田蜘蛛山に入った。