第22章 隠れ家 2 ※
靄のかかった頭で、この先の展開を理解する光希。宿屋で育った二人は、子どもの頃にそういう現場に遭遇したこともあるので、経験はなくてもなんとなくは知っている。
「だい、じょぶ。あ、ちょっと待って……」
光希は持ってきた包から布を数枚出して、お尻の下に敷く。
「初めては出血するって、聞いたことあるから……お布団、汚れちゃう」
そう言って、顔を赤らめる。
善逸は着物を脱いで「そうなんだ。ありがと」と言う。幼い顔に似合わない、鍛えられた身体が現れる。
善逸が着物を脱ぎ去り、光希の足の間に身体を入れた。彼女が恐怖を感じていないか、善逸は注意深く聴いている。
ふぅ、とひと呼吸吐いて、いざ、と構える。
するとそこで、今度は善逸に問題発生。
……え、嘘だろ
さっきまで元気一杯だった善逸の下半身が突如力を無くした。あり得ない状況に唖然とする。
慌てて持ち上げても、くたんとしている。
一気に青ざめる善逸。
怯える光希を第一に考えて、ずっと気を張ってきたのがここにきて限界を迎えたのか。出血、と聞いて光希以上に緊張してしまったのか。
考えられることはいくつかあるが、硬さを無くしたそれを見て、身体が硬まる。逆だ。逆すぎる。
やっとここまで来たのに。
ずっとずっと待ち望んでいた念願の場面なのに……。ここ一番で駄目になる自分に、情けなさ過ぎて涙が出て来た。
吐きそうな程に緊張しながら待っていた光希が善逸に目を向ける。そしてその涙に気がついた。
「えっ!どしたの善逸。何で、泣いてるの?」
驚いて身体を起こす。
光希は勿論、男子のそんな繊細なことはわからない。ただ、何か問題が起きたのだということはわかった。
「うっ、うっ……ひっく、…うぇぇん……」
「なに?……どしたの?え、なんだろ……、私、何か間違ったことした?……ごめん、わかんないよ…」
オロオロとする光希。
「違う……光希はこんなに、頑張ってくれてるのにっ……、俺が、駄目、なんだ……緊張しちゃって…ううっ……」
しくしくと泣く善逸。
緊張、駄目、などの言葉で、確信はないもののなんとなく状況を推察する光希。よくわからないけど、この先へはどうやら進めないようだ。