第1章 忘れてた
夢は続いた―――
置かれた状況が似ていた二人はすぐに仲良くなった。
面倒見のいい光希と、泣き虫だけど頑張り屋の善逸。二人は歳も同じだったので、兄弟のように過ごした。
ある日寝ぼけた善逸が、洗濯中にタライに落ちた。勿論善逸は見事にずぶ濡れ、そして号泣。隣にいた光希も頭から水を被った。肌寒い季節だったので、二人はすぐに風呂を沸かして飛び込んだ。離れの内風呂に一緒に入った時、善逸は初めて気が付いたのだ。
「光希……お前、なんでちんちんねぇの?」
その瞬間、善逸は目を覚まし、がばっと起き上がった。景色は、夜。自分は十六歳の身体だった。鬼殺隊の隊服を着ている。
隣から声がする。
「……なんだ?……寝ぼけてんじゃねぇぞ…、善逸……」
目を擦りながら隣で寝ている、……十六歳の光希。
「まだ交代じゃ…ないだろ、寝ろ……よ」
と言って身体を丸めてまた寝始める。
―――…そうだ……思い出した………
何で忘れてたんだ、俺。
子どもの時に、確かに見た。
こいつ、光希は、………女だ…―――――
さっきまでの夢に出ていた少年の面影を浮かべて眠る光希を、善逸のどんぐり眼が見つめる。
夢の続きを思い出す。
「何でっ…て………、何でだろうな?」
「光希、変なの」
「変とか言うなよ」
「ま、いっか!」
「そうだな!あー…あったけぇー………」
――…そのまま、俺、忘れてたんだ。
「ま、いっか」っつって、この歳まで。あり得ないだろ…おい……
近くに居すぎたからこそ見落としていた事実を思い出し、善逸は激しく動揺した。
彼は見張り交代までの仮眠時間を眠れずに過ごした。