第17章 友が起きるまで 3
日が昇ったので、二人は休憩することにした。
切り株に座る光希。
歩き疲れて足が痛い。
「すみません、俺の体力が落ちてるから……」
言っても仕方ないことはわかってるのに、悔しくてそう口にした。
義勇はそれに答える訳でもなく、無言で背中に背負っていた包を光希の前で開く。
「わあ!千代さんのおにぎりだ!」
しょぼんとしてたのに、途端に目を輝かせる光希。義勇は思わず笑いそうになる。
おにぎりには紙が添えられていた。
「ん?なにこれ」
光希が開けて見ると、
『左から、梅、おかか、昆布です。
光希ちゃん、必ず生きて戻ってくること。冨岡さん、おにぎり光希ちゃんに先に選ばせてあげてください。母ちゃんより』
と書かれていた。
思わず泣きそうになる。
いかんいかん、任務中だぞ、耐えろ。と言い聞かせる。
「先に選ぶもなにも……」
「お前の好物ばかりだな」
「こんなん選べねえよ、母ちゃん……」
「俺の好みは関係なしか」
「ははは、残念でしたね、義勇さん」
光希は悩みに悩んで梅を選ぶ。
最高に美味しいおにぎりだった。
義勇に仮眠をとってもらい、光希は音を立てないように静かに周辺の見回りをしていた。
仮眠といっても義勇は寝てないだろう。夜に備えて身体を休めているだけだ。
何度も一緒に野営をしているが、義勇の寝たところを一度も見たことがない。
見回りを終えて戻ってきた光希は「この体力お化け」と小さく呟く。
肩に乗せてた自分の鴉を義勇のそばに下ろし「寝てていいよ」と囁く。
近くの木にするすると登り、細い枝に器用に座って、上から見張る。
鬼の気配はない。
寝床はこの山じゃないのだろうか。
人を街からさらってきて、ここで食ってるのだろう。昨夜さらいにいったとしたら、今はどこかに身を潜め、今夜帰ってきて食うのだろうか。
絶対に許さない。
光希はこみ上げる怒りをぐっと押さえる。