第16章 友が起きるまで 2
光希はくるっと反対を向いて、炭治郎のベッドに向かう。
「ほら炭治郎。あとはお前だけだぞ。起きろよ」
そう話しかける。
「なんだよ、権八郎のやつまだ起きねぇのか」
「ああ……」
「軟弱だな」
「お前も今の今まで寝てただろうが!この猪!」
「あはは。でも、伊之助も起きたんだ。そろそろ起きそうな気がする。な、炭治郎!」
光希は、目を細めて眠る炭治郎を見つめた。
部屋に戻ると身体を拭いて入院着に着替えた。
「光希、入っていい?」と声がする。「いいよ」と返事を返すと善逸が入ってきた。
「やっと起きたね、伊之助」
「うん」
「本当に良かった……あ、ごめんね、思わず抱きついちゃった」
「別に、いいよ」
善逸はあんまり気にしてないようだ。
少し安心した。
「……私さ、炭治郎が起きたら、義勇さんのところに戻るね」
「え…何でだよっ!鍛錬、炭治郎たちと一緒にすんじゃなかったのかよ!」
「うん。そう思ってんだけど。もうすぐ任務も始まるでしょ。私、そろそろ刀振っていいって言われたし。剣の修行なら義勇さんとやるのが一番いい」
「でも…そんな急に……」
「ごめんね。少し前から考えてたんだ」
申し訳なさそうに言う光希。
善逸は手を伸ばして光希を抱きしめる。
「……やだ」
「善逸……」
「やだやだ!返さない。絶対嫌だ!」
「………」
「ここで剣の修行すればいいだろ。炭治郎も水の呼吸じゃん。俺だって、伊之助だって、相手するよ。だから……」
「……善逸」
「俺から離れていかないで……」
善逸は目をぎゅっと閉じて懇願するように言う。
「……わかったよ。すぐには戻らない。でも、少しの間ね。やっぱりいずれは向こうへ戻る。
私は特殊任務が多いの。義勇さんに報告したり、助言をもらうのは必須なんだ。任務が再開したら、私の意志とは関係なく、ここには居られない」
言い聞かせるように、善逸に伝える。
「私だって、ここに居たいよ。一ヶ月くらいだったけど、楽しかったもん。一緒に居られて幸せだったから、また離れるのは辛い」
「……ううっ……光希…っ、嫌だ嫌だぁ…」
善逸は泣き出してしまった。
困る光希。