第15章 友が起きるまで
「……善逸」
「ん?なに?」
呼ばれたので、光希を見る。
が、光希はそもそも善逸を見ていない。
顎に指を当て、何かを考えている。
善逸は、首を傾げる。
「お茶、ここに置くぞ」
机に光希の分の湯呑を置き、自分は傍の椅子に座る。光希はまだ何かを考えているようで、返事がない。
お茶を一口すする。
「……善くん」
「ゲホッ!!」
突然発せられた光希の言葉に、善逸は飲んでたお茶を吹く。
「ゲホッ、ゲホ、……は?何だよ」
いきなりあだ名で呼ばれて何がなんだかわからないが、とにかく顔を赤くする善逸。
「あ、いい反応」
「は?」
「あだ名で呼んだら、びっくりして起きるかなって」
考えてたのはそれか……と善逸は納得する。
「お茶、ありがと」と言って机から湯呑を取り、お茶をすする。
善逸は動悸が激しい。確かになかなかの効果だ。
「たんちゃん、たんくん、たんたん…いのくん、いのちゃん、いーくん……」
湯呑を持ちながらブツブツ言う光希。
「それ、自分が呼ばれてるって認識にならないんじゃないか」
「あ、確かに。なる程」
駄目か…とまたお茶をすする光希。
変な事考えるなあと、クスッと笑う善逸。
「何笑ってんの?」
「いや、なかなか面白いなって思って。光希ちゃん」
おかえしとばかりに善逸が言う。
「違和感、ないね……」
「……確かに」
「残念だったね、善くん」
また、ぶっとお茶を吹く善逸。
「あら?顔が赤いよ、善くん」
「お前……」
「何?なんか文句でもあるの?善くん」
「ちょ、やめろ善くん言うなこら、」
「なんで?可愛いじゃん、善くーん」
「恥ずいんだよっ!本当やめて」
「えー……どうしよっかな」
「うう、恥ずかしっ……」
ふふふ、と笑いながら、「じゃあこれは?」といたずらっぽく光希が言う。
「好きよ、善くん」
善逸は真っ赤になって口元を抑える。
「どうよ?」
「こんにゃろ……」
善逸は光希の手から湯呑を奪い取り、自分の唇で光希の口を塞ぐ。
「……最高」
唇を離した善逸が、赤い顔のまま悔しそうにそう言った。