第14章 両親
善逸が肩を掴みながら、ぐっと顔を近付ける。
「じゃあ、許可ちょうだい」
「………」
「なんで黙るの」
「ちゃんと言わないと許可は出ません」
「えー……」
「……はぁ、…残念ですが、」
「わ、わかったわかった。ちょっと待って」
ふぅ、と息を吐き、よし、と気合を入れる。
「俺たちはまだ子どもだから、今は無理だけど」
「うん」
「鬼をやっつけて平和になったら……」
「うん」
「俺と、結婚してください」
「………」
「………」
「………」
「……おい」
「………」
「おい、ちょ、何これ。何で無言なの。言わせといて、何この仕打ち」
「………」
「こら、何か言えよ、光希」
思わぬタイミングで求婚することになり、結構頑張って口にしたのに、反応なし。
顔を赤くした善逸は、光希に話しかけるが、光希は善逸をじっと見たまま黙っている。
「おい、聞いてんのか?」
少し不安になった善逸が、傷に響かないように肩を揺する。
「あ、ごめん……いや、善逸のその言葉、前によく聞いたなって思って……」
「は?」
「忘れてたんだけど、改めて聞くと、いろんな女の子に言ってたのを思い出したの」
ひいっと息を飲む善逸。
手当たり次第に求婚しまくっていた時代を思い出す。時代というか、つい最近までそんな感じだったから、光希がこうしてジト目で見てくるのも仕方ない。
今更ながら己の阿呆な行動を後悔する。
「や……その……」
「そうね。別に過去には拘らないけど、今回は保留とさせてもらいます。却下はしないから」
「……はい」
善逸は全力でしょんぼりする。
「でも……ありがと」
光希は笑顔を見せる。
「え?」
「今度、一緒にお墓参りに行ってくれる?何となく家の場所も思い出したの。探さなきゃだけど」
「あ、ああ。もちろん」
「じゃあ……、そうね。まずは私の恋人になって」
「……ははっ!それは喜んで受けさせてもらう。じゃあ、(仮)は外すってことで」
少しホッとした善逸は、光希に顔を近付ける。
「そのうち、婚約の保留も、外してもらうからな」
そう言って、光希に優しく口付けした。