• テキストサイズ

雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第12章 逢瀬


光希は横の枝に置いた刀を手に取る。

「善逸、私降りるけど。どうする?もう少しここにいる?」
「大丈夫だ。俺も降りる」

光希がするすると木を降りる。
善逸も刀を手に、降りてくる。


「じゃあ、反対方向だし、ここでいいよ」
「送る」
「いいって」
「送るの!」

善逸は光希と手をつなぐ。

「じゃあ、ちょっと街に戻っていい?」
「ん?」
「母さんに、お土産」

光希はもう目星をつけておいたお店でおはぎを買う。

「善逸はいいの?蝶屋敷のみんなに」
「いい。何も言わずに来たから」
「そうなんだ」
「初めての逢瀬だからな。からかわれたくなかったし」

二人は街を出た。
冨岡邸へ向かう。


「また会おうな」
「うん」

「光希、好きだよ」
「私も」

明日どうなるかわからない。そんな中でまた離れるのは辛い。善逸は胸が張り裂けそうだった。

「帰したくないな……」
「………」
「はぁ…、お前は帰りたいのね……」
「何も言ってないよ」
「音でわかるわ。本当にお前は……」

まだ(仮)はとれないようだ。
でも、少しずつ恋人に近づいていると思う。焦るな焦るな、善逸は自分に言い聞かせた。


「ここでいいよ」

家までまだだいぶある所で光希がそう言う。

「え、まだ、」
「実は私、この格好で屋敷に近付けないの」

光希は近所の人に男と思われてることを説明した。まあ確かに女として独身の義勇と暮らしていたら周りに勘ぐられたりするだろう。

光希は化粧を完全に落として、髪をいつもの位置で縛る。

「デハ、名残惜シイデスガ…」
「めちゃめちゃ棒読みだな、おい」
「あはは、またね、善逸。送ってくれてありがとう」
「うん。またな、光希」

光希は手を振って歩いて行った。
つい引き止めてしまいそうになるけど、今日は駄目だとぐっと堪える。沢山光希に無理させた。彼女は見た目以上に傷つき疲れている。


幼き日に守れなかったその後ろ姿を、今度は自分がしっかり守ると決めた。 

/ 1083ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp