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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第78章 【続編】幸せの続き


光希は今日も朝からつわりで吐いている。

「うえっ……げほっ……ぐぅっ……、はぁ…はぁ……」
「辛いな……よしよし」

吐き続ける彼女に寄り添って、善逸が背中をさする。

「善逸…さん、机の、上の、紙を……」
「持っていけばいいか?村田さんに渡せばいい?」
「うん……ぐぇっ……ごめ……」
「いいって。すぐ行くよ。あかり、父さんの背中に乗って」
「はい」

あかりはしゃがんだ善逸の背中に乗り、善逸は布であかりのお尻を包んで胸の前で縛る。

数枚の紙を持ち「これ?」と彼女に見せると、光希は力なく頷く。

「帰りに何か買ってこようか。食べられそうなものある?」
「……ない」
「そっか」

善逸は少し寂しそうな顔をする。

「行ってくるね」
「ありがとう」

善逸は走って家を出る。
人のいない道を駆け抜けて高速で走る。あかりは善逸の首元にぎゅっとしがみついている。木の枝などがあかりにあたらないよう気を付けながら走るが、それでも十分に速い。
彼は、戦いの後遺症で足が痛む日もあるが、調子のいい日は無理のない程度に鍛錬を続けていた。以前光希に体重増加を指摘されたからだ。



すぐに『学び舎 藤袴』に到着した。
善逸はあかりを背中から下ろし、手を繋いで中へと入っていく。
入り口には大きめの下駄箱があり、自分の草履とあかりの草履を高い位置に入れる。


入ってすぐの事務室に顔を出した。

「ごめんくださーい」
「あ、我妻」
「村田さん」
「光希、今日も駄目か」
「……はい。すみません」
「仕方ねえよ、こればっかりはな。男にはわからねぇ。とにかく、お大事にな」
「ありがとうございます。これ、光希からです」

善逸は頼まれた紙を渡す。村田は紙にさっと目を通すと椅子から立ち上がった。

「了解。我妻、ちょっと待っててくれ。上がってて。あかりも」

村田は紙を持って事務室を出ていった。
善逸はあかりを連れて部屋の中に入り、畳に座る。ここへはよく来ているが、あかりも善逸の膝の上できょろきょろしている。


妊娠も四ヶ月半ばになったというのに、光希のつわりは終わらない。安定期に入ったはずなのに。
やはり体への負担が大きいのだろうか。


善逸はじっと床を見つめた。




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