第1章 ✨出逢い✨
私が彼女に出会ったのは、桜舞う神社の境内(けいだい)だった…。普段はあまり外に出ない私だが、その日は何故か無性に散歩をしたくなり、その神社に寄(よ)った。
しばらく黙って桜を観ていたが、その時、強い風が吹き、桜の花弁(はなびら)を降らせた。私は、何となしに、その花弁を目で追った…。その時、一人の女性が瞳に映った。
彼女は、桜吹雪の中、桜を見ながら、泣いていた…。最初に目に飛び込んだのは、彼女の涙だった。その涙を見た時…もうすでに、私は彼女に、恋をしていたのかも知れない。
ウェーブがかった灰色の茶色の髪…。涙を流している眼鏡の下の綺麗な茶色の瞳…。そして、淡いぴんくの唇…。
それらが、桜吹雪の中で、風に吹かれていた…。私は、そんな彼女に目を奪われた。境内(けいだい)には、彼女以外に何人も人はいた…。でも、私には彼女しか見えなくなっていた。
その時、ふと彼女と目が合った…。彼女は、私と目が合うと、急(いそ)いで自分の涙を拭い、恥ずかしそうにこちらを見ながら、こう言ってきた。
澪『変な所を見せて、すみません。』
と私に言い、今見た事は忘れてくださいと、微笑んだ。その微笑みに、私は、不覚にもまた目を奪われた。彼女の瞳には、まだ、若干(じゃっかん)涙が滲(にじ)んでいた。
L『いえ、気にしないでください。あと…どうぞ…良かったら、使ってください。』
そう言って、私は、ハンカチを彼女に差し出した。彼女が驚いた顔をしたので、私は彼女に理由を説明した。
L『まだ、少し涙が滲(にじ)んでいるので…。』
彼女は私の説明を聞いて、少し恥ずかしそうにありがとうございます。と言って、私に満面の笑顔を向けてくれた。その笑顔に釣(つ)られて、私も彼女に微笑んだ。
澪『私の名前は星空澪と言います。ハンカチ、ありがとうございます。良かったら、貴方のお名前も教えて貰(もら)えませんか? ハンカチ、ちゃんと洗ってお返ししたいので。』
と彼女が言った。本来の私なら、もう少し考えてから、名前を教えただろう。でも、彼女には何故(なぜ)か知っていて欲しいと思ったので、私は迷(まよ)わず彼女に名乗った。
L『私の名前は、竜崎と言います。』