第6章 簓さんと漫才
それから半年。
トウキョウの生活にも少しずつ慣れてきた頃、世間はクリスマスの行事も終わり正月の準備にとりかかっている。
芸人にとって忙しくなる年末年始がやってきた。
ライブ出演にテレビの収録、先輩方らとの忘年会。
忙しいのは良いが言うほどギャラも高いわけでなく、かといってバイトをできる環境でもないからお金がない、売れ初め芸人あるある。
2ヶ月前。
年始で放送する番組の出演が決定したことが筒井さんから報告があった。
番組名は〝シャッフルパレ〟
名前の通りコンビ・トリオ・ピン芸人等をシャッフルして組ませネタをする。
よくシャッパレと略されている。
しかし今回は正月にやるということでスペシャル版だという。
「お疲れ様です、それではシャッフルパレの打ち合わせを行いたいと思います。宜しくお願いします」
テレビ局での打ち合わせ。
龍太郎と同行することになった。
番組のディレクターさんから台本を渡され企画や段取りの説明が始まった。
「いつもは若手芸人さんを集めた中で組んでもらうんですが、今回はスペシャルということで人気急上昇中の芸人さんに一緒に組みたい芸人さんを指名して頂く形になります」
「指名ってどこまでの範囲ですか?」
「オファーが通ればどの方でも、但し芸人さんに限ります。芸歴は問いません」
んー、誰かいたかな?
「はどうせ簓さんやろ?」
「え?」
「違うん?てっきりそう言うと思ったわ」
簓さんのことは一切頭に浮かんでいなかった。
無意識に近い芸歴の奴を思い浮かべてたし、そもそも簓さんとネタをやるなんて……
………………え? いいのか?