第1章 彼とうまいもの
「ん…」
目を開ければ眩しい光が目に入る。
今日は休みだから目覚ましを掛けていない。
右手に何が当たって振り向いてみれば、
「え、理鶯?」
私の声に理鶯が目を覚ます。
「ん、おはよう姉貴」
「え、いつから?」
「夜中だ」
弟の理鶯が隣で寝ていた。
いつの間に!合鍵は渡していたけどチェーン閉めるのを忘れていたらしい。
「連絡してくれればいいのに、最近連絡なかったけど忙しいの?」
「ああ、だから癒されに来た」
と言いながら理鶯が私に抱きついてくる。
相変わらずのシスコンぶり。
「もう、姉離れしなさい。何のためにトウキョウ出てきたのかわかんないよ」
理由はそれだけじゃないけど。
「ヨコハマに戻ればいい、俺が面倒みる」
「虫はヤだよ」
「この間、珍しい昆虫を見つけて食してみたらなかなか美味だった。今度調理してやろう」
「だ、大丈夫です……」
背が高くてイケメンなんだしモテるはずなんだけど、山に隠ってるなら出会いもないか。
そもそも虫って……。
彼女を早く作ってくれたら丸く納まるのに。