第1章 彼とうまいもの
少し顔を赤くして酔っている理鶯は唐突に話を切り出す。
「左馬刻の考えていることは大体わかっている」
「急に何だ」
「左馬刻、妹に男がいたらどうする」
「そんなのぶっ殺すに決まってんだろ」
「そういうことだ」
「あ?」
「小官も同じだと言っている」
「……あーそういうことか、可笑しいと思ったぜ」
理鶯が何を言いたいのか察した左馬刻はタバコを灰皿に押し付け立ち上がった。
「お前わざとだろ今日来たの。帰るわ、面白くねぇ」
「そうか」
「姉弟ヨロシクやってろ」
椅子に掛けたスカジャンを取り上げ左馬刻は店を出た。
「ヨロシクできたらもうやっている」
理鶯は誰もいなくなった席で一人呟いた。