第8章 聖夜ナイトメア
王子は、あたしの目の前に跪いていた。
息が上がっていて苦しそうに肩を揺らしながら・・・
それにあたしは必要以上に罪悪感を感じてしまいすぐに彼の肩に触れた。
『ご…ごめんなさい!!あたし…』
「君…いったい何なんだい?」
『えっ…』
「君の声は…僕をおかしくさせる…まるで、海の魔女をも欲しがる声のようで…」
王子があたしの方を見て、あたしの頬に触れてきた。
綺麗な王子様にこんなことをされたら、普通の女は喜ぶものだろう。
なのに、あたしは全然そんな気分にはなれなかった。むしろ自分の力が本物なのだと実感してしまった。
「君は、僕の…プリンセスだ…。僕の…」
「はいそこまでです。」
と、あたしの肩を抱き寄せてきた。
もう声がそいつのものだった。言葉遣いはなんとかそれらしくしているようだが、もうイラついているのが声で分かる
「なっ…お前…」
「おやおやぁ、王子様がお前なんて言っていいのでしょうかぁ?」
『…あんた、声隠しきれて…』
「とりあえずさぁ…」
あたしの肩を抱いていた腕が今度はあたしを放して王子の首元を掴んで低く唸った。
「オレのウナギちゃんに触んな、稚魚が…」
雑魚って…王子に向かってなんてことを・・・
と思ったら、急にあたしの腕を掴んで今度はホールに入った。
「あ、フロイ…」
「アズール、俺帰る。」
「…はいはい、ユウさんやヴィルさんには僕からそれとなく伝えますのでほどほどにしてくださいね。」
と、アズールは何かを察したようで特になにも言わずにあたし達を見送った。あたしは遠くにいるユウの名前を呼んだが・・・グリムとエースが肉の取り合いをしている現場を治めている最中だったからきっと聞こえてない・・・
あぁ・・・嫌な予感がする・・・